1500年前の古墳女子とデートしてみた!
時は未来、今から100年後の2114年に、古墳と歴史の街・大阪の堺市で、ハニワをかぶった女性のミイラが発掘される。


不思議なハニワ・ミイラ発掘のニュースは日本中を騒がせ、多くの考古学者や有識者がこのミイラの解明に乗り出すが、「誰が埋めたのか」「何故ハニワをかぶっているのか」という、湧き上がる謎は解けない。

時は、遡ること2014年6月の現代、ひとりの女性が堺の地に現れた。百舌鳥(もず)という変わった名前以外、いつからここに居たのか記憶が定かではない。


ただ、ここ堺という土地に懐かしさを感じ、吸い寄せられるままに辿り着いた。彼女の記憶を探る旅が始まる…。

自分は何者なのか、どこへゆけばいいのか、そんな疑問を抱えた彼女はまず、堺市役所に向かった。まずここで堺市のことを調べて、記憶を取り戻すのだ。


彼女の話を聞いてくれたのは、市役所の「シティプロモーション担当」のウラベ課長だ。この部署は堺の魅力を世に伝えるため、様々な事業を展開しており、市内の名所や歴史に詳しい。

カワイイ古墳女子を前に、ノリノリのウラベ課長は、得意のおしゃべりを延々と披露した。要約すると、「堺市は、古代に仁徳天皇陵古墳をはじめとする百舌鳥(もず)古墳群が築造され、中世には海外交易の拠点として『自由・自治都市』を形成。日本の経済・文化の中心地として繁栄してきた」ということのようだ。本当によくしゃべるウラベ課長だが、おかげで堺のことはよく分かった。

堺の事が分かったお礼と「おとなしくして欲しい」という願いを込めて、ウラベ課長にハニワをかぶってもらった。さながらハニワ課長だ。

ハニワをかぶってもまだしゃべり続けていたウラベ課長によると、最近では「堺市シティプロモーション認定事業」という、民間事業者等と一緒になって堺市の認知度向上やイメージアップに寄与するプログラムも進めていると言う。やらせておいてなんだが、課長自らハニワになるくらいだから、自由な発想の案も採用されそうだ。


ちょうどインターンシップで、シティプロモーションの業務を体験しに来ていた男子を見つけたので、課長に代わってハニワをかぶってもらった。ベラベラしゃべるウラベ課長とは反対に、寡黙でハニワが良く似合うハニワ男子だ。


ウラベ課長のトークへのお礼(?)に、仕事を手伝うフリをする百舌鳥。横にはハニワ男。今がいつの時代なのかよくわからなくなってきた。

せっかくなので、生粋の堺っ子というハニワ男に、百舌鳥は市内を案内してもらうことにした。


まず2人が向かったのは堺市役所21階の展望ロビー。地上80mから360度の展望が楽しめる回廊式ロビーとなっていて、仁徳天皇陵古墳をはじめ、堺市を広く見渡せる。


ところで、古墳時代の髪型って変だなと思っていたのだけど、こう見ると普通にかわいい。さすがに一時代を築いたヘアスタイルだ。


ハニワ男も百舌鳥のこの後姿に釘付けのよう・・・。


「古墳萌え」という新ジャンルか、「古墳時代」というアイドルグループが誕生しそうなカワイさだ。


さて、ハニワ男から改めて古墳について話を聞く。仁徳天皇陵古墳はエジプトのクフ王のピラミッド、秦の始皇帝陵とともに世界三大墳墓とされ、墳丘の長さは486m、周囲の三重の濠を含む全長は840mもあり、墳墓としては世界最大級の大きさを誇る。周囲には、現在44基の古墳が残っており、これを「百舌鳥古墳群」と呼ぶ。

さすが、堺っ子!体操だけじゃなく、歴史も語れるのが堺っ子というウワサは本当だった。

まずは早速、仁徳天皇陵古墳にタクシーで向かう。

堺市はハニワに慣れており、このようにタクシーも普通に乗せてくれる。
他の街なら、乗車拒否をされてもおかしくないだろう。


古墳が多い堺市では、ハニワは日常風景なのだ。例えば右は堺市博物館に飾られているハニワ。

だから街中(堺銀座商店街)をハニワ男が歩いていても、このように誰も気にしていない。やっておいてなんだが、もうちょっと怪しんでもいいのではないか。


「三国ヶ丘駅」から「百舌鳥駅」にかけて仁徳天皇陵古墳はある。

古墳を訪れ、静かに古墳を見つめる百舌鳥。そんな百舌鳥に声をかけてきたチャラい男がいた。
「髪型ユニークだね〜。なにやってんの?観光?案内してあげようか?」

この馴れ馴れしい男、どうやら百舌鳥の不思議な格好に興味を惹かれたようだ。


警戒するハニワ男にかまわず、男は馴れ馴れしく話しかける。
「とりあえずご飯いこうよ。古墳カレーを食べるとこ紹介するから」
「古墳カレー?」興味を引かれた百舌鳥はこの男についていく事にした。


着いたのは、仁徳天皇陵古墳のすぐ近くにあるお食事処「花茶碗」。
こちらでは前方後円墳のかたちを模した「名物 古墳カレー」を食べられる。


そしてこれが古墳カレーだ。古墳の形の器は女将の手作で、想像を裏切らない盛り付けだ。せっかくなので「百舌鳥古墳群」を古墳カレーで再現してみた。


実際には、仁徳天皇陵古墳が最も巨大で、いたすけ古墳の3倍以上のスケールだ。
普段は縁遠い古墳も、カレーにするとぐっと親近感がわいてくる。


古墳女子と古墳カレーとハニワ男のマリアージュ。古墳好きにはたまらないデート風景… のはずだ。


「ヤバいっしょ、このカレー」「ヤバいしウマい!」
古墳カレーを機に、一気に仲良くなるチャラ男と百舌鳥。

次に三人が向かったのは堺伝統産業会館。
その中にある刃物ミュージアムに行ってみた。


堺市は歴史的に刃物の生産でも有名で、ここでは様々な刃物が展示されている。刃物を前に、普通のミュージアムとはまた違った楽しみ方ができる。


ハートをあしらった包丁を見つけ、「カワイイ!」とはしゃぐ百舌鳥とチャラ男



次に3人が訪れたのは、茶室「伸庵」だ。

堺は茶の湯の大家・千利休のふるさと。利休ゆかりのこの茶室も国の登録有形文化財に指定され、庭園には国指定重要文化財の旧浄土寺九重塔などもある。写真では古墳時代と利休の時代が混在してしまっているが、様々な歴史が楽しめるのが堺市だ。


仲良く利休ポーズで写真をとる二人と、見切れるハニワ男。


茶室の入り口で記念写真。手馴れた手つきで百舌鳥の肩に手を回すチャラ男。


次に「堺市博物館」に向かう。こちらでは古代から現代まで堺市の歴史を、美術資料や考古学資料をもとに学ぶことができる。


様々なハニワも模型で再現されているので、このようにカップルでも楽しめそうだ。


館内には、仁徳天皇陵古墳前方部の石棺が模型で再現されており、中に入ることができる。


博物館では、古代甲冑を体験装着することができる。
「なんだか君と同じ時代を共有できているような気がしてきたよ。一緒に1500年前にいるみたいだね!」と語り合い、急速に距離を縮めつつある百舌鳥と男。


ここで機は熟したとみたチャラ男が積極的に口説きにかかる。壁ドンならぬ大仙公園の樹ドンである。突然のシリアスな表情を見せる男に困惑する百舌鳥、そして部外者のようなハニワ男。


「いいかげんにしろよ」


何かが乗り移ったような勢いで、チャラ男につめよるハニワ男。


ハニワ男のあまりの迫力にチャラ男は気絶してしまった。

「もうやめて!」百舌鳥が叫ぶと、ハニワ男が静かに語りだした。
「100年ぶりですねお嬢様。あなたは何百年経っても、その美しさは衰えやしない。そして1500年前からあなたを想う私の気持ちも何も変わらない。」 

その言葉に、百舌鳥は全てを思い出した。そうだ。百舌鳥は1500年前にこの場所で、このハニワ男に告白された。チヤホヤされるのをいいことに「もうちょっとだけ考える〜」と返答を引き伸ばしているうちに、ハニワ男は馬に轢かれて死んでしまった。

後を追うようにして亡くなった百舌鳥は、哀れんだ周囲の計らいでハニワ男と共に埋葬された。しかしハニワ男は、恋の叶わぬ無念さから霊魂となってこの堺を彷徨っている。そして1500年もの間、百舌鳥の霊魂を呼び出して求愛していたのだった。

霊魂となった二人は、堺市で様々な時代をデートしていた。
そして、ちょうど100年前の1914年にも・・・。

二人はチンチン電車(阪堺電気軌道)に乗っていた。明治44年(1911年)に開通したその電車は今も堺市を走っている。ちなみに霊魂になっても百舌鳥は返答を曖昧にして、ハニワ男をからかっていた。


明治10年(西暦1877年)から堺の港を約90年照らし続けた旧堺燈台。そこにも2人の姿があった。ハニワ男は百舌鳥の他愛のない話をいつも真剣に聞いてくれていた。そして、単なる嫉妬だと言えなくもないが、様々な時代のチャラ男から百舌鳥を守ってきたのである。


現在、旧堺燈台は、現存する日本最古の木造洋式灯台一つとして国の指定史跡になっている。


浜寺公園にも行った。ここは、日本最古の公立公園として明治6年(西暦1873年)に開園した。現在もこの公園は沢山の人で賑わっている。

歴史が多く残る堺市では、様々な時代をデートすることができるのだ。


「あなたはいつの時代でも私を呼び出すのね。何度言えばあきらめるの?もう告白も16回目じゃないの。マンネリ化して気持ちがぜんぜん伝わってこないわ。」


「あと100年!あと100年すればきっと…、そう思って長らく地上を彷徨いました。しかし1500年間の片思いで私の気力もつきました。もう私が現れることはないでしょう。さようならお嬢様。さようなら。」

そう言うとハニワ男は、とうとう力つきて倒れてしまいました。


ハニワ男のかたわらで泣き出す百舌鳥。

「あと100年!好きでいてくれたなら、貴方の気持ちに答えるつもりでいたのに…」

歴史ある堺市では、恋愛のスケールもとにかく大きいのだ。


そして、2114年に発掘されたハニワをかぶった女性のミイラは、実はこの百舌鳥だったのだ。安らかに眠るような優しい顔をした百舌鳥は、今にも目を覚ますようにも思えてしまう。しかしあのデートから100年後の2114年。どこかに旅だったかのように、二人が蘇ることはもう無かった。



さて、今回の古墳デートはいかがだったろうか。歴史ある堺市なのだから、今回のデートのように、時代のテーマを決めて観光するのはいかがだろうか。そしてコースを決めるには、

堺市シティプロモーション情報サイト

を参考にしよう。このサイトは、ウラベ課長が勤める堺市シティプロモーション担当が、堺の魅力(「ええとこ」「ええもん」)を知ってもらおうと、関西大学総合情報学部 堀研究室の学生と協働で制作したもの。


そして堺市広報部が展開する「堺市シティプロモーション認定事業」では、堺の魅力を新しい発想や創意工夫により発信する事業や、堺の素材を発信する事業など、堺市の認知度向上やイメージアップに寄与する事業に対して補助金を交付。広報支援など事業の実現を支援している。

例えば昨年は、堺の食に特化したサイト「&Riceあんどらいす in SAKAI」のウェブサイト製作、堺出身のバンドが中心となったロックフェスの開催や市内各所で開催される若者向け交流イベント、これら3事業に対し支援を行った。今年の募集要項はこちらのページにあり、事業所の所在地は問わないということなので、堺市の内外の有志はぜひ応募してみてほしい。

今回の古墳デートは極端な例かもしれないけれど、幅広いアイデアをお待ちしているそうです。

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■関連リンク
堺市シティプロモーション認定事業
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※出演:槌谷直樹、北島豪 撮影:東隆石 衣装:市原昌顕 ヘアメイク:湯浅真理子 ハニワ製作:大山大介 構成・文章:阿部良 企画・編集:谷口マサト